梅干しの効用

今年は例年以上の暑さで連日38度を超す日が続き、埼玉県では外気温度が41度以上を記録した。
そんな折、産経新聞7月30日の朝刊コラムに“梅干し”の効用が掲載されていた。
以下、そのコラムをご紹介。
宇宙飛行士の土井隆雄さんは1997年、米スペースシャトルで日本人初船外活動(宇宙遊泳)を行った。帰国後の会見の冒頭、シャトル内で作ったという日の丸弁当の写真を披露した。
「宇宙では刺激物がすごく欲しくなるので、梅干しが本当においしかった」。
弁当箱にいっぱい詰まったご飯の真ん中に真っ赤な梅干しが一つ。栄養不足で弁当としては落第だと思いきや、さにあらず。
「梅干し一粒が、99パーセントの米の酸性を中和し、米のカロリーは食べたほとんどが吸収される役割を果たす」。つまり「労働のための理想食」と、歴史学者の故樋口清之さんは、ベストセラーとなった『梅干しと日本刀』でたたえていた。
日本は暑かったり、寒かったり、湿気が多かったりと、必ずしも住みやすい所とはいえない。日本人は少しでも快適に暮らすために、さまざまな工夫をかさねてきた。梅干しはその最高傑作の一つといえる。
本日は「梅干しの日」である。その殺菌作用から、食べると難(7)が去る(30)の語呂合わせで生まれた。
6月に漬けた梅が食べられるようになる時期でもある。
日本一の梅の産地である和歌山県内のJA や加工業者に、全国から梅干しの注文が殺到しているという。朝食で食べれば、日中の塩分不足を予防し、豊富に含まれているクエン酸疲労物質を取り除く。梅干しが熱中症対策に効果がある、とテレビの情報番組が報じたからだ。
台風12号は日本列島を東から西へと横断する異例のコースを取った。
大雨の恐怖が去った地域では、再びうだるような暑さが戻ってくる。日本古来の知恵である梅干しの力を借りて、8月の猛暑を乗り越えたい。
「大粒の梅干し一つ暑気払ひ」(福田甲子男(きねお))

産経新聞 産経抄より 7月30日朝刊