國破れて マッカーサー

表題のタイトルの文庫本完読。ひさしぶりの感動の一冊。
日本の終戦から占領期間の生々しい記録が余すところなく述べられている。
日本占領期間のアメリカの戦略の凄さを改めて認識させられた。
本書の著者はアメリ国立公文書館で、機密文書をすべて閲覧し、それをもとに博士論文として書き上げたとのこと。
というのも1945年のアメリカ政府の機密文書を30年後に全面公開する、30年で時効となるからである。
その資料を基に書かれたのが本書である。
占領期間の日米の熾烈な外交戦が赤裸々に表現されている。
占領時、日本ではマッカーサー元帥は偉大な人として巷間伝えられ、私も子供のころは偉い人、日本にとって大切な人として聞かされてきた。
しかし、本書を読むうちになんとすさまじい国民洗脳教育を行っていたか、日本人の誇り、文化、伝統等をことごとく絶やし、腑抜けの人間を作る戦略であったことに驚きと憤りを感じた。
しかし,彼の国の戦略は本質を狙っていると感じた。
確かに日本と戦った諸外国は団結力、精神力、死をも恐れぬ勇猛果敢な愛国心をもって戦うのを目にしているので恐怖心は生半可なものではなかったと思う。
これを彼らが一番恐れ二度と戦えないようにすることを命題として統治した。
このことを解決するのが教育である、とし徹底的に改革を断行。
共産党日本教職員組合日教組)を認め、あらゆる手法で国民の洗脳を始める。マッカーサーは民主主義をいかに国民に浸透させすばらしい民族にすべきかを模索し、紆余曲折ながらも成功させた。
著者は言う。
忠誠、愛国、恩、義務、責任、道徳、躾という国民の「絆」となるべきものさえ、それらは「軍国国家主義」を美化するものと疑われ、ズタズタにされ日本国は内側から破壊されていった。
日本の「伝家の宝刀」とは日本人の「誇り」と「勇気」だ。
日本人の弱い精神状態の根源は心の中に強い信念、信じきれるモノ、を持たないからだ。
誇りを捨てた民族は必ず滅びる。
誇りを取り戻した民族は偉大な民となりその文化も栄える。

著者のほとばしる国を想う情熱が切々と伝わってくる。
この時期の日本の政治家の国を守る熾烈な外交努力を知り、国体維持に向け命を懸けて交渉し、抵抗した先人の意気を感ぜずにはおられない。
約600ページの大作に真実と熱い想いがぎっしり埋まっている。
読み進むにつれ背筋がピンと張ってくるのを禁じ得なかった。
ほんの少ししか書けなかったが、ぜひ本書を読んで歴史の重みを感じてもらえればとおもった次第。
そして著者は最後にこう語る。
「國破れて 山河在り」は、誇り高き敗者が、戦乱で壊された夢の跡に立ち、
歌った希望の詩だ。歴史に夢を活かすため、夢に歴史を持たせるため、我々が自分の手で、「占領の呪縛」の鎖を断ち切らねば、脈々と絶えることなき文化、
世界に輝く文化を育んできた美しい日本の山河が泣く。



著者  西 鋭夫
    現スタンフォード大学フーバー研究所教授他
出版社 中央公論新社
価格  ¥1286+税