十三─じゅうそう─

この読み方は大阪の人なら皆さん知っているけれども、他府県の人はなかなか読みづらいようです。
落語家で人間国宝桂米朝さんが書かれた“米朝ばなし”より一部を抜粋させてもらいました。
昔、この十三あたりは大阪の北の郊外で、今では想像もつかない辺鄙な、また閑雅なところだったようです。
その当時は野駆け(今のピクニック)をするとなるとこの辺りまで出かけたようです。この地名がなぜ十三と言われるようになったのか、その謂れは淀川の上流から数えてちょうど十三番目の渡船場があったことから十三番目の渡しがいつのまにからか十三となったそうです。
ここが有名になったのは亡くなられた俳優の藤田まことさんが“十三のね〜ちゃん”と言いだして一時えらく流行った記憶があり、これがきっかけかどうか今でも賑やかな町です。
十三はこの当時から焼き餅が有名だったようで、今里屋九兵衛という古い看板がかかっていて本家だそうです。
現在は十四代目の方が営んでおられるとのこと。
この“米朝ばなし”は上方落語地図と言う副題がついており、上方落語に出てくる百あまりの地名が落語の舞台となっていて、いまでも知られている土地や落語によってのみ伝えられているものなど、そのさわりを織り交ぜまとめられておりなかなか為になります。
これらの土地や地名の謂れ、文化、その時代の風景等を楽しく紹介しています。
その中で十三の謂れがおもしろいのでとりあげました。
落語がけっこう好きで一時、はまった経験があり、これらの話を思い出しながら、へえ〜、なんと、ふ〜ん、と感心しつつあらためて背景を勉強させてもらいました。
またおもしろい謂れなど機会を見てと思っています。

著者  桂米朝
発行  講談社
定価  781円 税別