蔵見学―京の酒を味わう


いい時節とはいえ、雨が多く不順な天候のせいで、あまり体調も整わない日々が続いたが、今日の見学は最高のお天気に恵まれ、暖かな行楽日和になった。久しぶりに京へ足を運ぶ。普段ほとんど利用することのない京阪電車淀屋橋で待ち合わせ。

今回の見学は酒同好の集いの催し。
日曜日と天候の良さに誘われてか、ホームはなんと熟年者で溢れ、わが事を忘れ思わず“お年寄りがこんなに多いとは”と口走ってしまった。しかし、この年齢が景気の活性化に少なからず寄与しているのではと思うほどで、ホーム狭しの感。

特急の車内は満席。天満橋・京橋と停車するごとにぞろぞろと乗客で混み始め、車中にぎやかな会話、笑い声で熱気充満。京阪電車はカーブが多いせいかスピードはさほどなく、目的駅まで50分ほど要した。京阪は昔、小区間で街中を走っており、細い道をいろいろ迂回しながらのようで、それをつなぎ合わせて路線にしたらしく、それでカーブが多いということらしい。

車中の混雑も伏見桃山駅で下車し、ホッと解放された。この駅前の商店街を抜け、約15分ほどで目的地の蔵元『齊藤酒造』に到着。すでに道中は桜に誘われて大変な人出。(ブランド“英勲”で有名な齊藤酒造株式会社 http://www.eikun.com/
この蔵元の斜め向かいの松本酒造の門塀の見事なこと。昔ながらの酒造りの建庢を垣間見ることができた。すぐウラの川(新高瀬川?)の土手ではライブが行われており、すでに11時頃だったが出店もあって多くの聴衆が思いおもいに観賞している。

齊藤酒造では工場長が直々に表までお出迎え頂き感激の次第。酒造場は昔風でなく、かなり近代化され、コンピュータ制御で生産されている。その工程をビデオで説明を受け、現場へ。
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≪お酒の出来るまで≫
1.洗米・浸漬(1日間)                                  2.蒸米(1日間)
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3.製麹(2日間)                                       4.酒母造り(11日間)
  → 

5.仕込み・醗酵(アルコール発酵を行う:仕込み4日間、醗酵30日間)  6.上槽(1日間)      
    → 

7.濾過 → 火入れ → 貯蔵(熟成:約6ヵ月間)     →    おいしいお酒のでき上がり!!
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洗米……最も大切な工程。これが全てといっても良い。
製麹(せいきく)……暖かい室(むろ)で麹カビを育てる。
酒母……酵母を育てる(アルコール生成のもと。酵母菌)
上槽……お酒を搾る。
火入れ……醸成した酒を加熱殺菌処理をする。(酵母が生きているので放置しておくと白濁してしまうので)
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工場でさっそく仕入中のタンク(昔は木樽)を見せてもらう。
一番目のタンクのフタを開けて頂き、中の発酵中の香りを嗅がしてもらう。ツンとくる刺激の中に少し甘みを感じさせる香りが上がってくる。
二番目のタンクは発酵日数が少ないのか、まだ甘さの強い香りが漂っている。もう数日したらお酒の風味が満ちてくるのでしょう。

いよいよきき酒の刻。我々の楽しみにしている瞬間。この蔵元自慢のお酒がテーブルに並べられている。
工場内ではすでに、まだ醸造途中のお米の形が残った状態のにごり酒を頂く。なんと美味か。昔はお酒の製法も進んでおらず、武士や町人の社会では、こんなお酒を飲んでいたので“酒を飲む”と言わずに“お酒を喰べる”と言っていたが、まさにこんな状態であったのであろう。お昼も十分過ぎていたので、空腹がおいしさをさらに倍加させ、きき酒が酒を飲む会に変わりそうな勢い。なんとか我慢し、藤本工場長にお礼申し上げ蔵元を辞した。

外はまことにおだやかな日和で、散策にもってこいの一日であった。
ほどよい疲れに美酒を添えられたせいか、足どりも軽やかに気分やわらぎ京の酒蔵の街伏見を堪能し、後にした。

※“英勲” 齊藤酒造株式会社(http://www.eikun.com/

(T.Ono)