怖いですね〜、動物の子殺し

ひさしぶりに竹内久美子さんの新刊を手にしました。
動物行動学の研究者で京都大学大学院で学ばれ著述業に転身。
遺伝子学に関するお話しは尽きないと思われる。
動物はすべて遺伝子の乗り物、という驚きのお話しが有名。
遺伝子が自分のコピーを残すため壮絶な陰謀、策略があってすべての動物が
コントロールされている由。
今回はこの遺伝子の仕業とも言える“子殺し”がテーマ。
種を守るために如何に動物は知恵を働かせているか、悲しいながら生きる術、子孫を残すと考えるとむべなるかなとも思える。
これが動物界のみならず人間社会にも起こっているという問題を最後に提起している。
実際に起こっている動物界の実例を多々挙げて、非情ながらなぜ起こっているのかを解き明かしてくれている。
パンダはなぜ2分の一の確率で双生児を生むのか、なぜ育児放棄をするのか、
熊の産児調整はなぜ起こるのか、子供を産むのにまずい時期がある?
サルの子殺しは結構知られているがなぜか、新リーダーが最初にする行為は?
メスに起こる妊娠中断や流産となるのは?
タツノオトシゴの自己改造とは? オスが育児嚢を持っており交尾後メスが卵をその中に産む、この中で受精、まさに本人の子供が生まれること間違いなし!
等々彼らの見事な種を守る術が展開されている。
昨今、マスコミでよく報道されているいじめや虐待、はては子供を死に至るまでと動物以上に目に余る出来事が多い。
動物の世界だけの事かと思っていたが、人間界にも各国で起こっているようでいろいろの事例が紹介されている。
動物では生存のため、食料確保のためと理由は多々あって厳しい環境を生き抜いていく必要があることは理解できる。
しかし、人間社会にも同様のことが起きている理由を調査、分析しその報告がまとめられている。
子殺しの理由、それが起こる必然から人間社会の現実を鋭く解説されている。

「本当は怖い動物の子育て」
著者 竹内 久美子  新潮新書  定価 700円(税別)