生涯現役のための面白健康学

先日、表題のテーマのセミナーに参加。
講師は京都大学大学院人間・環境学研究科教授の森谷 敏夫先生。
肥満、メタボリック症候群、自律神経、神経筋システム、心電図解析等身体機能の立場から人間と環境のかかわり方を研究されている。
今回は適切な食生活や運動習慣、また遺伝的要因による生活習慣病のメカニズムを研究、生活習慣病に対する運動の予防医学的役割についてのお話でした。
まず、生活習慣病は運動不足病。
人間の細胞の数は 60兆個
血管の長さは   10万キロメートル
心拍数は     10万回/1日
血液循環量は   7000リットル/1日

これが人の標準。
心臓はこの状態を維持するため、これだけの働きをしているから心臓が弱いと動けなくなる。エネルギー、血液を体に送ることができない。
だから「心臓」を鍛える必要がある。
すなわち足腰の筋肉がおとろえると心臓に血液を送ることができなくなる。
第2の心臓と呼ばれるゆえんである。
そのために筋肉を強くすることが大切で、特に足腰を鍛えておかなければならない。
人間は一年で1%ずつ筋肉が弱ってくる。
宇宙飛行士は2週間宇宙に多剤すると15年分くらいの筋肉が減少すると言われている。
「死の四重奏」と呼ばれる肥満症、糖尿病、高脂血症脂質異常症)、高血圧症は自覚症状がない。
最近の運動・医科学の研究によりこれらの生活習慣病に慢性的な運動不足が大きく関係していることが明らかになった。
だから心筋梗塞、糖尿病など統計学的にも危険度を軽減する。
脳・認知機能における運動の役割も海馬に与える影響は運動することにより、学習能力や記憶テストの成績が高くなることが報告されている。
また歩行速度は死亡率と密接に関係している。
歩行速度と生存率の関係が密接であることが示唆された。
歩行はエネルギー、動作調節、体重支持が必要でこれらは心臓、肺、循環器系、神経系,筋・骨格系システムに多くの要求を負荷する。
それゆえ遅い歩行動作は歩行エネルギーに追従できないと考えられる。
つまり、歩行速度は簡便で利用しやすい生命力の指標となりうる。
肥満と運動不足は死亡率を高める。
アメリカ医学協会雑誌に掲載された報告では8年間の追跡調査で1万人当たりの1年間の死亡率において男性では、肥満度(BMI)が25を超え、体力の低いグループでは155人が死亡、肥満度も体力も中程度の人では僅かに26人、 適正体重でよく運動している体力が高いグループではほんの15人だけだった。
女性での結果もほぼ同じで、肥満で活動的な人は、スリムで運動不足の人よりも病気の罹患率や死亡率が低い。

人間のカロリー消費の割合は、基礎代謝と食事中に消費するカロリー、運動、そしてNEAT(Non Exercise Activity Thermogenesis=非運動性熱産生)。
このうち、NEATによる消費が結構大きい。
日常のこまごました動き、じっとするのではなくどれほどこまめに動いているかで消費量に影響を与える。
じっと座っている機会の多い人は要注意。
一日中座っている傾向の高いと死亡率が高くなる。
“うつ”について
この症の人は慢性疾患の方に多く見られる。
薬を常用していると体内の多くのミネラルが体外へ排出される。そのため峰れるのバランスがくずれ不安定になる傾向がある。
アミノ酸の含まれている食物を多く摂取すると良い。
ビタミン群のB6、たとえば豚肉、マグロ、乳製品、ほうれん草、豆類、人参などトリプトファンが多く含まれているのが良いそうだ。

生涯現役と言われるのには運動が大切。運動をしないと自律神経の活動が低下する。筋力が落ちて筋肉量も減る。基礎代謝も低下する。その結果として太る。
アメリカ歴代大統領のジョギング姿をTVなどでよく見る。
ノーベル賞受賞の山中教授もジョギングが習慣のようですが健康のためまた脳に良いから、と言えるのでは。
今回のまとめ
●人体の4割を占める筋肉はブドウ糖や脂肪を最も大量に消費する“臓器”である。
運動療法(習慣的な運動)は
・脂質代謝や糖代謝を改善
・体重や脂肪の量を調節している自律神経系の働きを向上
・過剰な食欲を抑制し、内臓脂肪を低減
などの効果をもたらす。

先生の講義の元気の元は運動による心身の健康状態を物語っているとつくづく感じられました。
また63歳とはとても思えない筋肉量、そしてスリムで若々しさが溢れていたのもうなずけたし、講義は女子学生であふれている、とのコメントも納得させられた次第。