「天皇」

表題のタイトルの単行本。
副題は“学校では教えてくれない「天皇と現代史」の真実”。
ここには天皇論ではなく日本国にとっていかに天皇陛下が国民の心と共に歴史の中を歩まれてきたかを丁寧かつ詳しく書かれている。
今上陛下の特に大東亜戦争(太平洋戦争)敗戦に対して心を痛められ、日本を救うためにいかに苦境に対処されてこられたか、どのように戦勝国と接してこられたか等々,とても我々には推し測れないご苦労された様子がくわしく書かれている。
日本国民は天皇を戴いていることがどれほど素晴らしいことか、誇りと自信と勇気をもたらしてくれる偉大な存在であることがわかる。
ここには1〜6章で構成されている。
第1章 天皇陛下と共に生きる
第2章 生と死の狭間に得たもの
第3章 国際銀行家に影響された日本
第4章 骨抜きにされた「天皇の国」
第5章 天皇陛下の国 日本
第6章 そしてこれから

天皇陛下が日本人を形作るのに欠かせない「扇の要」の存在であったのに今、日本人は忘れつつあるように思う、と共に天皇陛下「不在」によって日本と言う国が融解してきているようにも思える、と著者の天皇への敬愛の気持ちが切々と表現されている。
そして敗戦後占領軍(GHQ)によって国という根幹がないがしろにされた経緯が明快でその過程がよく理解できる。
天皇陛下の世界での位置づけとしてあまり国民に知られていないでしょう、と格式について書かれている。
アメリカの大統領が最高の礼装であるホワイト・タイ(燕尾服に白い蝶ネクタイ)で出迎える相手は世界で3人。
それはローマ法王、英国女王、そして日本の天皇陛下だけと言うこと。
天皇陛下のさまざまな国内外の行事や日々の行状についての表現が学ぶに値する敬語をもって書かれているのには感心させられるとともに国語の大切さを再認識させられた。
最初に書いたように天皇陛下、そして現代史を知るうえで、そして日本という国のかたちがよくわかると思う。
著者は東京大学医学部教授で陛下が手術をされた時にずっと待機され、処置に立ち会われたとのことです。

著者  矢作 直樹
東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部長・教授)
発行元 扶桑社
定価  1300円+税