「ふく」のあじわい

いよいよ鍋のシーズンに。ほとんどの方はこの時期に一度は鍋をつつかれているはず。
ところで、鍋の代表的な食材である「ふぐ」、所によって呼び方が変わるようで、下関・福岡あたりでは「ふく」、ふくは「布久」(ふくろ)または布久閉(ふくべ:ひょうたん)とも書かれ、その膨れた様子と丸みのある外見からつけられたと想像できる。どうも縄文時代からたべられていたようで、貝塚の化石から多く出土されている。
大阪ではご存知のように「鉄砲」として有名。これは豊臣秀吉の時代に「河豚食用禁止令」が出されてから、特に厳しかったのは徳川親藩。中でも尾張藩がつとに知られている。
こんな古川柳がある。
「河豚食わば わが身の(美濃)終わり(尾張) 名護屋ふぐ」

長州藩はさらに厳しかったようで、お家断絶の処罰まで設けられていたとか。
大阪も上述のように厳しかったようだが、商売人の町らしくヌケ穴的感覚というか、かなり適当なところもあったようで、隠語として「鉄砲」というのもそんなところから発したらしい。当たれば死ぬ―ふぐの刺身は「鉄砲の刺身」で「てっさ」、ふぐちりは「てっちり」と称するのもムベなるかな
もともと大阪は“魚庭(なにわ)”と呼ばれていたようで、鯨と鮭以外はなんでも獲れた。そんなわけでふぐも大いに食べられていたらしく、そこから隠語遣いが生まれたとのこと。

ふぐの効用
ふぐの肉100g中にコラーゲン20gが含まれ、脂肪が0.1%だそうで、なかなか健康・美肌食のようだ。
『ふぐは水分が多く全体の70%を占める。そのため3枚におろしてから24〜36時間程度冷蔵庫に入れて水分を抜き、身が引き締まるのを待つのがよいとされる』と言われている。

いよいよシーズンイン。高価な食材とはいえ、庶民にとっては何としても口に入れたいものである。これを食すると口福(幸福)になる。(ほんまかいな〜)天然ものか養殖ものかと吟味しても素人には判断がつかないようですが、皆さんはいかが?見分け方もあるらしい。尾びれがポイントのようだ。天然ものはきれいな扇形で、養殖のそれは仲間にかじられるのでギザギザらしい(ふぐは共食いするらしい)。

そんなことより、鍋にてっさ、そしてひれ酒と共に気の合った仲間とワイワイガヤガヤが最高の料理。

ふぐは淡白ながら、味わい深い魚で、私などは魚の王ではないかと思っている。

資料 新幹線車内誌「ひととき」より

T.Ono